言葉のちから

 

「いってらっしゃい、気をつけてね」

という言葉を、私は必ず言うようにしている。

その瞬間を一生の別れのように思うほど、毎回 毎回 真剣に。

突然いなくなってしまうかもしれない、という恐怖は ずっとある。

そういった不幸な未来を想像しては、なみだして、とても苦しくなって、眠れなくなったりする。

だから、押しつぶされそうな恐怖を、自分の中にとどめておくだけということができなくて、言葉にしてしまうという部分もあるのかもしれない。

結局は自分のためにしていることなのかもしれない。

それでも、何事もなく無事に帰ってきてくれることを、私は毎日 祈っている。

少し前のこと。

“そういった想いを言葉にすることで、言霊となってその人を守ってくれる”

という話を聞いた。

そうかもしれない、と はっとした。

言葉のちからを信じたいと、そう思った。

そしてそれが 私に出来る数少ないことの一つなのかもしれない、とも思った。