イタリアのプローチダ島で、ほとんど毎日通っていたパン屋さんがある。
お昼前なんかはいつも、みんなパンを買いに小さな列が出来ていた。
私もその1人でお昼ごはん用のピザを毎日買っていた。
お店の奥さんがレジをやっていて、私の番になると、”いつものピザね”というように、ピザの並んでいるショーケースの前に移動して、毎回好きなピザを選ばせてくれた。
思い出すのは本当に柔らかな微笑みで。
しっとりと、静かに花が咲いたような微笑み方をする人だった。
白い紙で丁寧にピザを包んで、最後にレシートを挟んで袋に入れてくれて、お会計をした後にそれを手渡してくれた。
そこの空気がとても優しくて、私はいつもくすぐったくなるような、嬉しい気持ちになった。それは思い出すその瞬間も変わらず。
言葉をほとんど交わさなくても、印象に残る出会いっていくつもあるのだと思う。