静かで、あたたかな記憶

 

先日、ふと飲みたくなって買ったインスタントコーヒーを、用事をいろいろと済ませて、ひと息ついた夕方に淹れてみる。 外はもう暗くなり始めていた。

お気に入りのカップにお湯を注いで、くるくるとかき混ぜて、こくりと ひと口。

その瞬間、以前訪れたスウェーデン北部にあるルーレオでの記憶が、ふわっと、走馬灯のように一気に記憶が蘇ってきた。

夜11時近く出発の夜行列車に乗って、ルーレオに向かったこと。

何度か目を覚まして、メレンゲのような滑らかな雪と橙色の家の灯りを眺めていたこと。そうして朝方に見た、風に舞ってきらめく光のつぶたち。

目を閉じて、またゆっくりとじっくりと、アルバムをめくるように、思い出す。

食べていたごはんとおやつ、毎日通ったカフェ、泊まっていたゲストハウスのキッチン。旅に出て初めて心細さを感じて帰りたいと思っていたことも、ついでに。

そんなふうに思い出したのはきっと、ルーレオのICAというスーパーマーケットで買った安いインスタントコーヒーを私はよく飲んでいたからだったと思う。

においとか味とか、ささいなものがきっかけで過去のことを思い出す。

それは、私にとって とても大切なこと。