それでも、フランダースが好き

 

「Do you believe in God?」

ギョレメ村で出会ったイラン人の女性に、突然こんなことを聞かれた。

その時のことを私はときどき思い出す。

いつだったかの幼い時、弟がぽつりと呟いた。

「神様はね、ただ見ているだけなんだよ。」と。

それから、こちらを見て、意地悪そうにニヤリと笑った。

目を背けたくなる様な、耳を塞ぎたくなる様な事件があったとき、私はその言葉を思い出してしまう。どうしてあんな目に合わなければならないのだろうと強く思うと同時に。ただ、やっぱり怖くて言葉にはできない。

悲しい事件が起こった時。

どうして、こうなってしまったの?と嘆く。

神よ、なぜこのような試練をおあたえなさるのですか?

オーマイゴッド。私の神様よ。

嬉しいことが起こった時。

神の思し召しだ。神さま、ありがとうございます。

悪いことは、神のせいに。

良いことは、神のおかげ。

全ては神が決めたこと。

「You? You believe in God?」

私はイラン人の女性に同じ質問をした。というよりも自分の答えは出さずにただ質問を返した。

「Yes, I believe.」

英語が出来ないと言っていた彼女が、大きな声でそうはっきり言った。

私に答えなんて出せない。私に宗教は語れない。

だけど、私はずるいことに困った時はやっぱり神頼みをしてしまうのだ、これが。

毎度毎度の、飛行機の離陸着陸時はもちろん。(本当にこの時が1番が多い)何か自分にとって大事なことがある直前には。

そしてやっぱり、私は優しいシンプソンズ家のお隣さんが好きなのである。

答えのない、とりとめのない話その1。