アルゼンチン・ブエノスアイレスの私の大好きな宿がなくなってしまった。
住所だって、すらすらと書けるくらいの。
初めての旅で1ヶ月ちょっと滞在した、私にとって本当に心地の良い宿でまたいつかブエノスアイレスに行った時は必ず泊まろうとずっと思っていた。それがなんということだろう。
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次の旅の為に色々と下調べをしているけれど、行きたかった宿がなくなってしまっていることは多い。あまり人が集まらず静かで落ち着いていて安い、という条件で選んでしまっているのかもしれないけれど。
なくなってしまうのは仕方のない事だと分かっている。それでも、月並みな言い方だけれど、本当に心にぽっかりと穴が開いてしまったようにさびしくなる。
“変わらないで”というのはただのエゴイズムでしかないと私は思う。だから口には出さないで、ぎゅっと心の中にしまう。
ただ思ったことは、なくなってしまう前に写真に収めていて本当に良かったということだ。本当に。屋上から見える日常、食べたおやつのこと、洗濯物のにおい、宿に射し込むやわらかな光、出会った彼らのこと。それらは私の中で永遠にあの姿のままなのだから。
さようなら。どうか私を忘れないで。私もきっと忘れないから。