南米の旅を共にした彼女は、とてもとても美味しそうにクロワッサンを頬張った。
私はその姿がとても好きで、何枚も何度もシャッターを切った。
あるふとした瞬間に、その幸せなごはんの時間を思い出す。
ごはんに限らず、おやつも、その他 食べるもの全を彼女はとても美味しそうに食べた。
そして彼女が食べた跡はいつもとても綺麗だった。
彼女が食べるものは何でも美味しそうに見えた。それを見るのがとても好きだった。
そんな彼女に再会するきっかけとなったのは、
先々週の木曜日の真夜中にきたある1通のメール。
(その詳しい内容は秘密だけれど、ブエノスアイレスのパンのこと。)
それから翌日の金曜日の夜。
仕事を早くあがらせてもらい、彼女に会いにみなとみらいへ向かった。
手にはお土産を持って。
ベンチに座っていた彼女を見つけて、走って言った。彼女も私を見つけて立ち上がった。
私たちはきゅっとハグをして、
「久しぶり!元気だった?」
と挨拶。
「あのおじさんのパンじゃないけど、クロワッサン買ってきたよ。」
と私が言うと、彼女はニヤッと笑って、
『うん、なんとなく分かってた。さすがだね。』
だって。私も思わず彼女と同じようにニヤッとしてしまった。
コーヒー屋さんに勤めている彼女は自分で淹れたコーヒーを持って、
私はお土産のクロワッサンを持って、芝生のある公園へ向かった。
ブエノスアイレスでのあの時と同じ。違うのは、夜であることと海が見えることだった。
彼女はコーヒーをカップに注いでくれて、私はクロワッサンが入っている紙袋を開けた。
そして、差し出してくれた彼女オリジナルのブレンドコーヒーをひと口。
「おいしい。」
と心で思ったことがそのままポロリと出てしまう。
久しぶりにきちんと珈琲豆の味と香りがするコーヒーを飲んだ気がした。
それから2人してクロワッサンをかじる。サクリと音がして、パンの欠片がパラパラっとこぼれ落ちた。ブエノスアイレスのあのもちもちしたクロワッサンとは全然違うけれど、バターの香りがふわっと口の中で広がって、とても美味しかった。彼女を見るとまたニヤッとしてから、
『うむ、これは上質なクロワッサンだ。』
そう言ってしげしげとクロワッサンを眺めてから、またひと口頬張った。
それはもう、本当に美味しそうに。
2012年11月3日の日記より