”かもめ食堂”を私がひとりで観る時は、特別な日の真夜中と決まっている。
特別な日とは、自分の誕生日だとか何かの記念日だとかそういう日ではない。これは自分でも分からないのだけれど、”あ、今日は観る日だ”と思う瞬間があるのだ。
そうと決めた日の夜は、早めにお風呂に入って、コーヒーを淹れて、ふかふかのふとんに入って、パソコンをつける。それから部屋の灯りをおとす。
私はいつもポロポロと泣きながら観てしまう。最初から最後まで。
そんなにボロボロ泣くような映画ではないはずなのだけれど、決まって涙が出る。
森の中で深く深呼吸をしたような、光の入る静かな図書館で詩集を1冊読み終えたような。そんなふうに、自然に、でも力強く、私を救ってくれるもののひとつ。
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翌日、シナモンロールを食べたくなるのも決まって、そう。